nagasakiika

H26年度国立大学図書館協会海外派遣事業の情報発信のための期間限定のブログです。

UMassで見たこと・聞いたこと:図書館という「場」で展開されるいろいろなサービス

遅くなってしまいましたがUMassでの調査についてもまとまった記事を書いておこうと思います。UMassでは朝から晩までみっちりのスケジュールで刺激的な一日でした。時系列にそって見たもの・聞いたことをご紹介します。

f:id:nagasakiika:20141119190403j:plain

ちなみにこれが図書館の全貌。当日は上へ下へと行ったり来たりして、いろいろなサービスや施設を見せていただきました。

【1000-1030 Arrival,setting in】

・今回の調査で案内役を引き受けてくださったSharonさんのオフィスからスタート。オフィスをちょっとのぞかせてもらいました。ここにある学生用の図書はすべてシャロンさんが選書しているとのこと。

f:id:nagasakiika:20141119185212j:plain

【1030-1100 presentation】

・自己紹介がてら、自分の大学図書館について簡単に説明をしました。初英語プレゼンで緊張しました…しかもその前に先方が用意してくれたPCだとパワーポイントが開かず、持ってきていた自前のノートPCをつないで何とか事なきを得ました。嶋田さんのはうまくいっていたのですが…万一に備えて自前PCを持っていてよかったです。

f:id:nagasakiika:20141119185602j:plain

パワポのタイトルが日本語だからダメなんじゃ…とか言いながら苦戦している場面。このあとなんとか無事にプレゼンできました)

ちなみにプレゼンのなかでCURATOR(千葉大リポジトリ)の話をしたら、アメリカでも有名だよとのコメントをいただきました。

【1100-1120 Teaching commons(以下TC)】

TCは、副学長より、「図書館に連携の場を作って欲しい」との要請と予算を受けて図書館に設置されたそうです。お話をしてくださったTC担当のKate Freedmanさんによると、図書館はどの分野の人にとっても「中立」の場所であることがポイントとのこと(立地的にも中間といえるそうです)。TCは教員の作業スペースや授業などに関する相談の場所としてひらかれており、様々なサービスが受けられます。特徴的だと思ったのは、弁護士資格を持つ図書館員に、著作権に関する相談(論文執筆やオープンコンテンツ作成に際してなど)ができるというもの。

f:id:nagasakiika:20141009062045j:plain

(説明してくださっているKateさん)

これは今回の調査期間中ずっと感じていたことですが、「図書館員」とひとくちに言っても、日本とはまったく別の職業のように思えるということです。YaleやUMassで出会った「ライブラリアン」と呼ばれる人々は、何かしらの専門分野を持っており、そのうえで図書館というフィールドでその専門性を活かして働いているプロフェッショナル、という印象を受けました。

【1130-1150 Learning Commons(以下LC)】

案内してくださったのはCarol Willさん。LC、ご覧のとおり大変にぎわっていました。

f:id:nagasakiika:20141119194053j:plain

PCデスクは満員。アドビソフトなども入っていて、学生が自分で高額なソフトを買わなくてもよいようにしているそうです。

f:id:nagasakiika:20141119194122j:plain

ライブラリアンに質問できるデスクをはじめ、いろいろなサービスデスク( PCサポート、レファレンス、キャリア・留学サポート)がひとつの空間にあるとのこと。必要になりそうなサポートを集めてワンストップサービスを提供しているとおっしゃっていました。

f:id:nagasakiika:20141119194152j:plain

これは大型ポスターが印刷できるプリンタ。以前は工学部にしかなかったそうですが、要望を受けて設置したそうです。好評とのこと。

【1150 TeamBasedLearning space(以下TBL)】

f:id:nagasakiika:20141119200126j:plain

TBLはチーム学習をとりいれた授業をおこなうための専用の教室です。案内してくださったのはRobert Davis先生。副学長の「make student active!」という声にこたえ、3年かけて作ったとのこと。1テーブルにつき1スクリーン、1ホワイトボードが備えられており、各テーブルの様子が見られるようになっています。ここの環境を使った新しい授業について何人かの教員から提案を出してもらい、実際に授業で使ってもらうといったことをおこなっているそうです。

【1:30-1:50 Learning resource center(以下LRC)】

LRCは主に学部1・2年生を対象としてチュータリングをおこなっています。図書館の中に設置されていますが、図書館の組織ではありません。したがってほかにも学内に活動場所があるとのことですが、主な拠点は図書館とのことです。TCでも言及されていましたが、学内の中心という図書館の立地がポイントだと考えられるそうです。

f:id:nagasakiika:20141120084843j:plain

解説時間帯は13:00から22:00頃までで、学生が多く来るのは夕方とのこと。昨年は延べ人数でなんと約34,000人が訪れたそうで、学生たちに今や必須のサービスとなっていると感じました。ちなみにチューターをつとめるのは学部学生のみ約50人で、これは対象が学部1・2年生なので、彼らにより近い存在をと考慮したためとのことです。

【14:00-14:25 Digital Media Lab(以下DML)】

メディアに関する質問なら何でも受ける施設で、いろいろな機材やスタジオの貸し出しもおこなっているとのことです。授業でビデオ作成の課題が出たりするので、そのために機材をかりに学生がやってくるとのことです。夜10:00まで開放。

f:id:nagasakiika:20141120094637j:plain

3Dプリンタでつくった模型を見せてくださっているところ。3Dプリンタは、まだ本格的に導入されているわけではないが、すでに運用案を提案済みとのこと、学習目的の利用を優先するよう検討しているとのことでした。

【14:35-14:50 Writing Center(以下WC)】

WCはLRCと同様、図書館の組織ではないけれど図書館に設置されています。ここには大学院生・学生のスタッフがおり、ライティングの指導を1対1でおこないます。相談者が持ってきた文章を機械的に修正するのではなく、会話しながら相談者自身の気づきを引き出し、自分のちからで改善していけるように導くということです。そのためスタッフに求められるのは「書き手」としてよりも「話し手」「聞き手」としての資質だそうです。

f:id:nagasakiika:20141120125739j:plain

見学させていただいた時にも多くのセッションがおこなわれていました。どんな風にWCをPRしているか伺ったところ、Facebookなどのwebを使った宣伝に加え、スタッフが授業を訪問してWCについてプレゼンするといった活動もされているそうです。

 

以上、駆け足でしたがUMassでの模様のレポートでした。26階建ての図書館のあちこちで様々なサービスが展開されている様子を見ることができました。UMassにおいては、キャンパスのなかで立地的にも心理的にも中立の位置にある図書館という場が、大学に欠かせない存在になっていることを感じました。ここには書ききれなかったのですが、このほかにも昼食、お茶、さらには晩御飯までセッティングしていただいており、本当に充実した調査の一日となりました。UMassについても現在追加質問をおこなっているところですので、Yaleとあわせて今後もご報告していきたいと思います。

 

ということでこの派遣報告ブログはここで一区切りとさせていただこうと思います。また何か思いついたように書くこともあるかもしれませんが…。ご覧いただいた皆様ありがとうございました。